• 朝野裕一

運動よもやま話6

ヒトの運動を中央(大脳〜脊髄)でプログラミングして発現させる。

運動のプログラム理論です。

この理論は、反射運動のような刺激ー応答のパターン化された動き以外

の運動を説明するのに有用でした。

神経は感覚入力の信号がなくても、出力としての運動を発現できること

が数々の実験から証明されていて、反射活動でなくとも運動が可能であ

ることがわかったわけです。

もちろん感覚入力はとても大事な情報で あり、特に運動を調整する

場面で重要な働きをすると解釈されるようになりました。

そして、ある一定のパターン化された運動は、中枢運動パターン発生器

というところでプログラムされた運動の発現であるとされました。

ネコの実験などで、歩行のパターンは脊髄レベルで作り出しているもの

と考えられ、その脊髄を刺激する強さによって、歩行・走行など速度と

異なる運動パターンを作り出すことができることもわかりました。

感覚の入力や、必ずしも大脳レベルでの命令がなくとも、歩いたり・

走ったりできたのです(これはあくまでネコの実験であることをお断り

します)。そして、感覚の入力情報は先ほど述べたように、運動の調節

を行うのに関係していることもわかりました。

中央制御室で、一定の運動プログラムを状況に応じて指令を出したり、

調節をしたりといったイメージでしょうか。

しかし、この理論にも限界が指摘されます。中央制御室で全て判断され

、運動が発現するわけではないということと、状況の変化に対しより

柔軟に対応するには 、中央指令室の既定のプログラムだけでは対処で

きないのでは?ということです。

同じ指令でも状況に応じ、ヒトは適応的に運動形式を変えることができ

ます。極端に言えば同じ指令でもそれを途中で変換して別々の動きを発

現できるということです。

例えば、物を持ち上げるという運動指令があったとして、それを何度も

繰り返せば、当然筋肉が疲労してきて同じ力を発揮できなくなります。

その時、必要に応じて動きを変えたり、別の筋肉の助けを借りたりと、

運動自体を変換できるわけです。

そうでないと困りますよね。

この中央での運動プログラム理論は、今までの反射的運動の階層的な

トップダウン型の制御ではなく、感覚入力の刺激などを取り入れて運動

を調節できることを示し、一定の運動パターンに伴うプログラムの存在

を示唆したことで、運動制御への理解を深める役割を果たしました。

しかし、ここからさらに運動制御の考え方は進化していきます。

今日はこのぐらいにして、また明日お会いしましょう。

今日も読んでいただきありがとうございました。

参考図書)

「モーターコントロール」第4版〜研究室から臨床実践へ〜

(Anne Shumway-Cook, Marjorie H. Woollacott・著、田中繁・高橋明 

監訳、医歯薬出版、2013年.)