• 朝野裕一

運動よもやま話7

自由度という考え方を運動の中に持ち込んだ人がいます。

ニコライ・ベルンシュタインというロシアの生理学者の方です。

人間に数多(あまた)ある関節と筋肉をいちいちプログラミングして動

かしているのだろうか?素直な疑問ですよね。しかも、それらを状況に

合わせて、異なる動きに変換する必要もあるわけで、これはとてもでは

ないけれど無理そうに思えます。

今だからそう言えますが、以前は運動制御の研究が発展途上(今も続い

てます)であり、自由度という観点から運動を見直す考えが定着してい

ませんでした。

自由度は冗長性という言葉で代用できるかもしれません。

ある程度自由度がある中で、協同で働く系が存在しているのではないか

?とベルンシュタインさん以降の人が考え始めました。

ボールを投げるという動作を一つとって見ても、早く投げる、ゆっくり

確実に投げる、遠くに投げる、誰かにぶつける(ドッジボールなど)、

によって投げ方は変わるでしょう。

ボールの大きさ・硬さ・形などによっても投げ方は変わるでしょう。

同じ投げる動作でもヒトはそれだけ多くの選択肢=自由度の中から、

ある一つの動きを選択しています。

また身体の大きさや(手の長さ・大きさ)年齢(発達段階)の違いによ

って投げ方は異なります。

このように、自由度の中から協同収縮(筋肉の)系を目的とする(目標

とする)運動や外界からの刺激に応じて調整させながら、運動を構築す

る、ダイナミックなシステム系の存在を提起しています。

これらを総称して、システム(動的システム)理論と呼びます。

ベルンシュタインさん以降も多くの人が研究を行い、この後お話しする

アフォーダンスや、複雑系の運動理論につながっていく拠り所となって

いるという意味でとても重要な考え方でした。

空に浮かぶ雲の動きや経済の様々な動きなどは複雑系の科学という考え

方でくくられています。

ヒトの動きもその一つの例と今は考えられています。

もう少しこの考え方をお話ししていこうと思います。それは次回に。

今日も読んでいただきありがとうございました。配信が遅れました。

また明日もよろしくお願いします。

参考図書)

「モーターコントロール」第4版〜研究室から臨床実践へ〜

(Anne Shumway-Cook, Marjorie H. Woollacott・著、田中繁・高橋明 

監訳、医歯薬出版、2013年.)