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運動よもやま話9

  • 朝野裕一
  • 2017年8月21日
  • 読了時間: 3分

運動から一旦離れて、非線形性のお話をもう一度してみます。

こんなグラフ(下図)をよく見かけると思います。

字が見づらくてすみません。

青い直線がいわゆる線形性を表す線です。対して、赤い線は非線形性。

縦軸はなんでもいいです。例えば損益、技術の進歩度、所用時間など。

横軸は通常時間の経過を示すことが多いと思います。

縦軸を損失度とするならば、金融の世界での突然の暴落とそれに伴う、

膨大な損失を表します。

縦軸を技術の進歩度合いとするならば、巷に言われるシンギュラリティ

を示すグラフになります。

加速度的に技術の進歩が進み、それがほぼ無限大に近づくのが、

2045年と言われています。

縦軸を所要時間、横軸を車の数とすれば、車の台数が増えるごとに加速

度的に渋滞が起こり、結果的に所要時間が思った以上に増えてしまう、

という現象を示すことになります。

このように物事は往々にして直線的・比例的には進まず、加速度的・

対数関数的(exponential)に生じるということがわかってきました。

これが非線形性の特徴です。

翻って、ヒトの身体運動についてもう一度考えてみましょう。

ヒトには動きの自由度が存在します。ある意味無数の運動パターンが

理論的に存在することになります。

これらに対し、一つ一つ運動プログラムを立てていると、周りの変化に

対応することができなくなります。はっきり言って間に合いません。

かといって、決められたパターンで対応していては、先ほどのグラフの

直線的な形になってしまい、固定した(パターン化された)動きしか

できなくなります。これはとても周囲の環境に対して脆弱です。

そこで、ヒトはある程度冗長的な、周囲に適応した動きをその時に応じ

発現することができるように柔軟にできているだろうという考え方が、

(動的)システム理論の根幹ではないかと考えます。

そしてある変数(速度など)が変化することに応じて、動きの戦略を

変換できる仕組みを持っていると考えられます。

その変数の代表的例が速度です。

歩いていて、どうしても早く移動する必要性があると我々は走ります。

歩く動きと走る動きは異なる動作です。当たり前に聞こえますが。

椅子から立ち上がる動作でも、ゆっくりと立つ場合と素早く立つ場合

では、その動きは当然異なってくるでしょう。

もう一つの変数が動く前の状態=初期値です。歩く場合などでは姿勢と

言ってもいいと思います。

初期の姿勢によってその後の動きが限定されることは想像がつきます。

このような変化に適応したシステムが、ヒトの動きには存在している

だろうというのがシステム理論の言わんとするところではないかと

思います。そして自己組織化が、

その解決に寄与していると考えられています。

次回はまた別の視点からヒトの身体運動を見た考え方;アフォーダンス

について紹介したいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。また明日。

参考図書)「半脆弱性」

(ナシーム・ニコラス・タレブ著、ダイヤモンド社、2017年)

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