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朝野裕一

運動発達における知覚と運動の学習

子どもの運動発達において、知覚と運動の関連性はとても重要です。

なぜかはこれからお話しします。

運動を試行錯誤する過程は、知覚を運動へと変換する過程といっても

いいでしょう。そしてそれはフィードバックの回路で、その都度修正さ

れていきます。

どんな過程かというと、主に5つのステップで表されます。

1.感覚の入力:視覚、聴覚、触覚、筋の運動感覚などの刺激(情報

)を受け入れて、神経を介して脳へ伝達されます。

2.感覚の統合:入ってきた感覚情報を体系化(整理)し、過去に蓄積

された情報(記憶)と統合します。

3.運動への変換:現在の感覚情報と過去の記憶(長期記憶)情報に

基づいて、内的(外的;環境などの要素ではなく)に運動を決定する

(再調整する;フィードバック情報に基づいて)段階です。

4.運動の活性化:運動それ自体を実際に行う段階です。

5.フィードバック:行われた運動やパフォーマンスの結果を感覚器官

を通じて、フィードバックして運動の評価を行います。

この1.から5.までの過程を繰り返して、運動を学習していくという

ことになります。

もう一つ、

この過程を行うときの、知覚ー運動学習の構成要素があります。

それは、

身体意識、空間意識、方向意識、時間意識です。

身体意識とは、子どもが自分の身体の部位の働き(機能)や性質につい

て、よりよく理解するように援助する役割を持っています。

主に、

身体の部位についての知識、それらがどう動くかという知識、どのよう

に動かせるかに関しての知識を指しています。

空間意識は、身体自身が占める空間に関する意識と、空間における身体

の方向性について知ることです。

それには、

主観的な意識(主観的定位;定位=orientation)、すなわち物と自分と

の関係性、自分が占めている空間の大きさを感じることなどで、子ども

の発達段階ではしばしば知覚の誤りを生じます。

物と自分の関係や自分の占める空間の感覚を誤って認識します。

成長にともない、主観的定位は客観的定位に経験を通じて移行します。

客観的定位とは、空間や位置の判断をするときに、自分の身体とは別の

独立したものとして考えられるようになることを指します。

自分の身体位置を介さずに、物と物との位置関係を認識することもこれ

に含まれます。

自分の前にボールがある→自分の身体との関係で認識する

ボールがゴールの前に置いてある→物と物の位置関係を認識する

方向意識は、空間の方向を意識することなのですが、自分の内的な感覚

ラテラリティ;laterality)と客観的な方向性に分けられます。

言葉で、内/外、上/下、右/左などと言われて、ラテラリティと方向性の

両方を含んだ空間の方向(3次元的)意識を発達させていきます。

最後に、

時間意識ですが、客観的な時間意識以外に、自分の内面での時間感覚と

いうのでしょうか、それが発達していきます。

主に、

同期、リズム、系列という言葉で表されています。

同期やリズムは、目と手の協調した動きを可能にします。そして、時間

系列に沿ってリズミカルな運動を継続させる能力が発達していきます。

ここまで、知覚ー運動学習について概要をご説明してきました。

ちょっとアカデミックというより、かなりアカデミックっぽいお話でし

た。実際に運動を指導する場合、このような概念は知識としてとても

重要だと思います。要素に分解して整理する作業(体系化)は、その

物事などをきちんと理解するのに必要な過程です。

しかし、これを知ったから目の前の子どもにきちんとした指導ができる

かといえば、そうはいかず、個々の特性を感じながら、総合的にアプロ

ーチしていかなければなりません。

その時に、頭を整理して今は何のための運動をどうしてこの子に求めて

いるのだろう?という振り返りを常にしながら行うでしょう。

そのためのツールとして、やはり概念的な整理は必要だと感じます。

というわけで、

もう少しお勉強は続きます。次回は情緒的な発達と運動との関係につ

いてお話しします。ここまで読んでいただきありがとうございます。

ではまた明日、ごきげんよう。

(参考/引用図書:「幼少年期の体育 発達的視点からのアプローチ」

デビッド・L・ガラヒュー 著、杉本隆 監訳、大修館書店、1999年)

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