• 朝野裕一

Journey to the Exercise World :Vol.1 〜解説編〜

さてさて、Mr.TAKASHIの微小重力での身体丸め回転体験はいかに?

身体を丸めて浮いたまでは良かったが、勢い余ってしまい壁という壁に

ぶつかって散々な体験となってしまった。

ー浮くまでは良かったけれど、焦って丸まったのがよくなかったのかなぁ

??

あちこち壁(微小重力下では床も天井も壁もなく全てが壁になる)に

ぶつけた部分をさすりながら、ひとしきり考えるTAKASHI であった。

ーみなさまお疲れ様でした。これにて着陸態勢に入ります。もう一度

ハーネスがしっかり締まっているか、具合をお確かめください。

相変わらず流暢なCAアンドロイドの声が響く。

その後、ロケットは無事ドバイ宇宙空港に着陸した。

TAKASHI はなぜうまくいかなかったのかを考えながら、タラップを

降りていった。

================================

微小重力空間こそ真の意味での3次元空間とも言えると思います。

そこに上下左右前後の方向性は自分を中心にしてあることに変わりない

のですが、実は重力に伴う上下の関係が消失してしまいます。

その環境への混乱を感じ、重力+地面との接地感覚+地面反力が全て

無くなることに伴う身体運動の制御のしにくさが生じる体験を

Mr.TAKASHI はしていたということになります。

================================

まず、

地上と微小重力空間での物体の動きはどう考えたらいいでしょうか?

比較してみましょう。

左は、ボールが平らな床を転がっている瞬間の図です。重心の存在と、

重力と床からの反作用力(=床反力)、摩擦力とその反作用力、回転

の慣性モーメントなどがボールに加わっています。

何も力を入れなければ、慣性の法則によりボールは動きません

(静止している)。重力とその反力は常にかかっています。

そこに向かって左側へ押す力が最初に加わると、それに伴ってボール

が動き出し先ほど挙げた力が常に働くことになります。

それに対して、重力がない状態(空間)ではどうでしょうか?

突然その空間にポッと現れれば、静止して浮かんでいるでしょう。

※この時も質量の中心は存在しています。重力が加わっていないので

重心とは言わず、質量中心と呼びます※

しかし、空間中に置くときに加わったちょっとした力の大きさと向き

(方向)に沿って、ボールは色々な方向に回転したり上下動したりと

運動を続けることになります。

左はほとんど2次元の動き、右が3次元の動きです。

今度は、人が丸まっている状態を想定してみましょう。

ジャンプをして丸まらない限り(それも一瞬にすぎません)、

重力の影響で床をでんぐり返りすることになります。

重力と床反力、回転モーメントなどの力が働いているのはボールと

同じです。

自分が回転している感覚を制御するためには

(止まった後も含め)、前庭と呼ばれる三半規管などからの情報処理で

ある平衡感覚の鍛錬が必要になってきます。ちなみに現在の私などは、

でんぐり返って止まった瞬間にめまいが生じてしまいます。

普段そのような身体動作を行なっていないことによる、感覚の衰えが

生じてしまっています。情けない!

では、微小重力空間を模した水中ではどうなるでしょうか?

今までの力に加えて、浮力と水の粘性抵抗力がかかります。

浮力の分重力は減少し、身体が地面(水中深く底の方)へ押し付け

られる感覚は少なくなります。

それはある意味、微小重力に似た身体操作感覚を生じさせますが、

水の抵抗が加わるので、回転する力への抵抗もかかります。

自然にしていると、浮力に応じて身体は水面方向に浮かんでいきます。

同じ場所で回転し続けることは不可能でしょう。

さて、いよいよ微小重力空間です。

回転させる初動の元になる力に沿って、身体は回転+どちらかの方向

(最初に加わった力の方向;慣性の法則)に動いてしまうでしょう。

ですから、

Mr. TAKASHIの経験はこんな具合の散々な結果になってしまいました。

ある方向へ移動しては壁にぶつかり、その反力でまた別の方向へと、

回転は続けるものの、同じ位置での身体制御は至難の技だったことが

わかるかと思います。

重力の影響で地面にへばりついた状態で生活を続ける私たちは、

上下動はある制限下では可能ですが、その状態を維持はできないため

いわば2.5次元での生活をしているとも考えられます。

真の3次元では、空間を有効に使える反面、空間中を移動することを

含めて、身体運動制御をするには大変な苦労を要することが想像でき

ますね。宇宙飛行士がなぜ厳しいトレーニングをしなければならないか

があらためて理解できるのではないでしょうか?

試行的な企画科楽読み物としての「Journey to the Exercise World」

でした。いかがでしたでしょうか?

これに懲りずにVol.2を思案中です。

お楽しみに。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。