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朝野裕一

ヴァーチャル世界再訪

ヴァーチャルとは仮想≒虚構ではないということを前回書きました。

今日はそのことについてもう少し考えてみます。

例えば物を見る=視覚について考えてみます。

我々が目にする物や景色、人などはそこからの光刺激を網膜に一旦

二次元画像として投影し、視神経から視覚野に届いて初めて三次元画像

として認識し直す仕組みになっています。

実際にそこにあるものを捉えていることには間違いないと感じますが、

同じような刺激を直接網膜に与えれば、そこに物があろうがなかろうが

ヒトはその存在を認識することになります。

実際にないものをあると捉えるならば、それは幻覚と言われる状態で

しょうが、実際に光刺激を与えていればそれは、実質存在すると認識

できます。

それが VR=ヴァーチャル・リアリティです。

音が聞こえる仕組みも同様に考えられます。

例えば、

実際に人の声という音源さえあれば、そこに人が存在することを認識

します。

実際に存在していなくとも、存在していると認識できるわけで、

これは決して幻想ではなく、仮想や虚構ではありません。

音源を聞いた当人は、人の存在を認識することになります。

これが、VR=ヴァーチャル・リアリティです。

テレイグジスタンスというお話をしましたが、そこに物や人が存在して

いると実際に(実質的に)感じる環境を作ることを指します。

ヴァーチャル会議での存在感を伴うコミュニケーション以外にも、

その利点はたくさんあって、

例えば、

放射線の存在する環境に人が身を置けば大変危険です。

しかし、テレイグジスタンスと放射線を感知できるセンサーを持った

分身ロボットを併用すれば、危険な環境下での作業が可能になります。

また、

人の体内の臓器や組織などをマイクロサージャリーとして手術する

場合においても、分身的なロボットを用いて眼前で実際に手術する

ようにして実行可能となります。

実際にそのようなシステムはすでに一部病院で取り入れられています。

さらには、

今後実現するであろう宇宙探査、特に火星が有望ですが、その際にも

火星に送り込んだロボットが、ヒトに代わって探索作業を実行します。

ユビキタスコンピューティング(ubiquitous computing)という

考え方があります。

これは、

現実世界のあらゆるところに計算機やネットワークによる情報機能を

与えることによって、至る所でこれらの情報的支援を受けることができ

るようにするという考え方です。

現在盛んに言われている IoT もその一部でしょう。

その中に、可視光通信という技術があります。

我々が目にできる光線の波長は限られていて、

それを可視光線と言います。

可視光通信とは、LEDによる白色光などに変調を加えて、目には感知

できない情報を載せる(伝達する)技術です。

この技術によって、照明に照らされた部分の前に行くと、その商品の

情報などが配信されるといったことが体験できるようになります。

そして、

身体運動に関しては、様々なヴァーチャル刺激を加えることで、運動

を体感できたり、バランス練習が可能になったり、特殊なスポーツ動作

の鍛錬などにも応用可能です。

実際にこの技術を取り入れているブロ野球球団も存在しています。

感覚刺激はいわゆる五感全てにおいて研究されていて、視覚・聴覚

情報や触覚情報刺激が先行していますが、味覚や嗅覚もかなり進んで

きています。

このように、我々の生活レベルでのVR応用はもうすぐそこ、間近に

あるといってもいいでしょう。

参考図書:ヴァーチャルリアリティ学(舘暲、佐藤誠、廣瀬通孝 監修

、日本ヴァーチャルリアリティ学会 編、特定非営利活動法人 日本

ヴァーチャルリアリティ学会、2011.)

今日も読んでいただき、ありがとうございました。ではまた明日。

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