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朝野裕一

人が速く動くことについて考えてみた:第九話

人が速く動くために必要なものはなんでしょうか?

それは、

速く動かすためのなんらかの物理的な力ではないでしょうか。

常に地球から加わる重力、身体内部から発する出力としての筋力、

地面から受ける反発力としての地面(床)反力、物体が動くことに

伴ってかかる慣性力。

まだまだあるかもしれません。

身体内部で受ける靭帯などの伸長力・圧縮力などなど、

生体に加わる力も様々です。

人が素早く動くことの一つに切り返し動作=カッティング動作という

ものがあります。今日はそれについて物理的な力の観点から、

考えてみましょう。

以前お示ししたことのある図を使わせてもらいます。

下図右側の絵だけご覧ください。

サッカーでボールを保持しながらフェイントをかけるとき、素早く

身体を切り返す必要があります。

重心の位置を速く変換するとき使われる力は、太い黄色の矢印で示した

地面を押す力に対して、細い黒矢印で示す地面からの反力です。

地面を押す力の反対側へ重心は移動する。その時の起動力が地面反力

です。

地面を押すのは重力と脚力=筋力ですが、最終的に重心を移動させる

のは、地面(床)反力になります。

もちろんツルツルの地面や床であれば、摩擦力がかからないと滑って

転んでしまいます。

身体に必要なのは地面を素早く押す力と、切り返して重心を移動させる

ための体幹の安定性でしょう。

体幹自体がぶれていると重心の位置が定まらず、目標の位置へ一直線に

動くことができません。

地面を素早く押す力は、筋力とその速度の掛け合わせである筋パワー

です:力×速度=パワー。必ずしも力だけではありませんが、瞬発力

して理解されているものです。

身のこなしの素早さは、身体内部の出力と地面などの外部環境から

受ける力をうまく受け止めながら達成されるものです。

筋力といっても、

外部へ発する力だけではなく、外部からの力を受け止める力も必要と

されることがわかるかと思います。

この辺の話は改めて筋力を総合的に捉える作業の中でお伝えできればと

思っています。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。

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