- 朝野裕一
筋力についてしっかりと考えると、関節の話をしなければなりません
ここまで、
筋力についての比較的基礎的な知識についてお伝えしてきました。
筋力は身体を動かすいわばエンジンと考えられます。
そして、
身体を動かすとは、結局各関節が動くということになります。
なので、
筋力=筋肉が発揮する力→は関節に働き→関節が動くことで→身体運動
が引き起こされるということになります。これまた当たり前のこと
ですが、とても重要なお話でもあります。
関節が動くためには、筋肉の収縮が起こる前に前提として考えておかな
ければならないことがあります。
それが関節の可動域と可動性です。これも以前折に触れてお話しして
きたことと重なると思いますが、筋力を考える文脈においてもう一度
しっかりと認識しておきたいと思います。
まずは関節可動域についてです。
関節の可動域には(実は)二種類あります。
一つは、
●自動可動域=生理的可動域(physiological movement)です。
昨日書いたように筋肉によって動く運動を自動運動と言いましたね。
それと同様、筋肉によって自分で動かせる関節の範囲を自動可動域と
呼んでいます。
もう一つが、
●他動可動域=解剖学的可動域(anatomical movement)です。
これが他動運動と対をなしており、外側からの力などによって、
その関節が動く範囲のことを指します。
一見、
自動可動域=他動可動域と思われるかもしれませんが、実はわずかなが
らも自動可動域<他動可動域となっているのが普通(正常)です。
もしあまりにもこの差が大きすぎる場合は(自動<<他動)、発揮する
筋力に何らかの問題を抱えている証拠にもなります。
他動的には動く範囲を保っているのに、筋収縮では動く範囲がとても
狭くなってしまうということは、筋力に何か問題があることを
示唆しています。
多くは、
筋力の極端な低下は、神経の問題を予想させます。神経炎や神経の疾患
などに伴って、充分な筋力を発揮させられない=(神経)麻痺と呼ばれ
るものが関与しているかもしれません。
もちろん、
関節自体に痛みを伴う場合などは、筋力が抑制されますが、原因が
骨折や炎症などだと、他動的にさえ動かすことはできませんね。
何れにしても、
厳密には自動運動はちょっとだけ他動運動より範囲が狭まります。
※ちなみに、自動>他動ということはあり得ません。※
さて、これがストレッチなどに応用されると、
他動ストレッチ→他動力によるストレッチと、
自動ストレッチ→自動運動に伴うストレッチなどと呼ばれてきます。
※この時のストレッチされる筋肉は、自動運動する筋とは反対の作用
を持つ筋肉(拮抗筋)ですが・・・※
ここで、
関節の可動域が様々な理由で、正常と思われる範囲より狭まったと
仮定してみましょう。
そうすると、
いくら筋力をあげても、関節は他動的な関節可動域の範囲を超えること
はありませんので、運動に制限が生じてしまいます。
これが、筋力とその前提となる関節の可動域が重要な理由です。
エンジンをいくらふかしても、ブレーキがかかっていたり、ギアが入って
いなければ、車は動きません。
これからしばらく、関節の動きについて考えていこうと思います。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。