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朝野裕一

関節の動く範囲〜手のひらを返す

人の腕の動きの最大の特徴の一つは、手のひらを返したり手の甲を

見せたりという前腕の回外・回内と言われている動きです。

手のひらを上に向ける動きを回外と言います。これは前腕と言われる腕の部分にある橈骨と尺骨という二つの骨で行われる動きです。もう一方の方向である前腕の回内運動はこの二つの骨が捻れるように動いてなされます。例えば腕時計(って今あまりしないかもしれませんが・・・)を見るときなどに現れる動きです。

手の甲を上にするこの回内という動きは、実は、ヒトを含む類人猿特有の動きです。猿はここまで完全に手の甲を上にすることはできないと言われています(1)。

完全に橈骨が尺骨の周りを回って捻る動きなので、手の位置を自由自在に決められる点で、手を上手く使うようになった進化の証でもあります。

腕で支える腕立て伏せで見てみましょう 。

腕は、手の甲を上に向けた回内ポジションにあります。これって四つ足動物でも同じじゃないの?

その通りです。哺乳類に見られる四つ足位は、橈骨と尺骨が捻れた状態に位置しています。しかし、これを逆に回して手のひらを上に向けるような回外の動きは哺乳類にはできません。

猿は、途中までしかこの回外運動ができないことは先ほど記しました。

ではそれ以前の爬虫類はどうでしょう?爬虫類の場合ヒトでいう二の腕(上腕骨)の位置が哺乳類と異なっています。

上腕部分が体の外側を向いており、前腕部分の捩れは生じていません(2)。

何気なく使う手の動きや位置を決める前提として、こういう構造が機能

を保証しているんですね。

そしてそれは進化の過程とも関係する、というわけです。

とても興味深いなと思います。

参考文献)

(1)「人類の祖先はヨーロッパで進化した」デイヴィッド・R.ビガン著

河出書房新社、2017.

(2)「デクステリティ巧さとその発達」ニコライ・A.ベルンシュタイン

著、金子書房、2003.

今日も読んでいただき、ありがとうございます。また明日。

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