人が速く動くことについて考えてみた:第十一話
昨日、予測的にカラダを動かすための準備、という話を少ししました。
それは、
予測的姿勢制御;先行随伴性姿勢調節(APA:Anticipatory Posture
Adjustment)と言われているものです。なんだかいきなり難しい話に
なりそうだぞ、と思われなくてもいいです。そんなに詳しくは書きま
せんので。ご安心を。
まずは下の図をご覧ください↓
よく例えで表されるお話です。
人が立っていていきなり(素早く)片手を挙げるとしましょう。
すると腕の重さが前に行くので、それに伴い重心がわずかに前方に
移動しようとします。
しかし、
その現象が起きる前に、事前に予測するがごとく背中や太もも・ふくら
はぎの姿勢を調節する筋肉が収縮して、重心の前への急速な移動を防ぐ
べく働く、というのが予測的な姿勢制御と呼ばれているものです。
脊髄レベルで起きる反射よりはもう少し上位のレベルで起きる反射的な
反応です。非常に速く反応するという意味では反射的と言っていいで
しょう。どれだけ素早く腕を挙げてもこの反応は起きます。
この例は、
姿勢の調節を目的とした反応的な筋収縮でしたが、他にも予測的に
筋収縮が起きる場合があります。
ジャンプをして着地する直前に、すでに着地を予測して膝を安定させる
ハムストリングスなどの筋肉が(事前に)収縮する現象が起きます。
これ即ち、
フィードフォワードと言われる現象です。小脳や大脳基底核その他の
部位などの関連などで反射的に筋肉が収縮するんですね。
また、
長潜時反射(LLR:Long Latency Reflex)などという現象が生じることも
わかっています。
先ほど書いた、
脊髄よりも上位の部分を含んだ反射回路の存在がわかっています。
脊髄のみの反射よりは、神経信号の伝わる距離が長くなる分時間が
かかりますが、
それでも、非常に短い時間で起きることに変わりはありません。
事前に筋収縮が起こることによって、その周りの関節を固める作用
(stiffness)が生じ、結果として関節を安定させる作用が働く訳です。
うまくできているもんですね。
しかも意識して行う前にすでに準備される;意識してからでは遅すぎる
ような急速な運動や重心移動に伴う作用です。
ヒトが素早く動いたり移動したりする際にはこのような反射的な機構
が伴っているということも憶えておいてください。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。